4/18,25OA 横田 雄也先生
岡山家庭医療センター 総合診療医
私とは何か――「個人」から「分人」(講談社現代新書 平野敬一郎)
★人に優しく、モノの見方が広がる本
「3年ぐらい前から、読書しよう、と、本を読み始めました。社会に出て、自分がいかに井の中の蛙かと感じることが多々あったからですね。今は哲学書がブームで“昔の人たちこういうこと考えてたのかー!”と、その思考プロセスを知り考えるのが楽しくて。それに“哲学読んでます!”なんて言うとカッコよく聞こえるから(笑)なんて冗談ですが」と、冒頭から、素朴で温かく、等身大な語り口の横田先生に親近感を覚えながら、本『私とは何か』のお話へ。
「この本に出てくる“分人”という言葉。一般に、聞きなれないかもしれませんね。我々は、集団の対比として個人、という言葉を使っています。個人とは、英語だとIndividualという言葉で、直訳すると“それ以上分けられない”となります。平野氏は、この表現をもとに「人は1つの人格しかないとか言っているけれど、実はそうではないのでは?」とい言っているんです。例えば、家にいる時と職場にいる時、振る舞いやスタイルは違うかもしれませんが、どちらも本当の自分です。このように、人は個人ではなく、バラバラな“分人”をいくつか持っていて、それが繋がっている、と述べているんです」
―いわれてみたら、確かに私もそうですね…
「そうですよね。僕が“分人”という言葉を知って良かったと思うのは、大雑把に言うと 人に優しくなれた感じがするんです。“分人”という言葉を知って、日常生活、物事を見る視点に変化がありました」
―具体的には?
「例えば、周りに“この人ちょっと合わない…”という人がいたときです。今自分は、その人の“分人”しか見ていない。その人は、もしかしたら別の場所では、頼れるリーダーだったり、一家の大黒柱かもしれない…そうと思うと、0か100で好き嫌いを測るのではなく“20%は合わないけれど、80%は学びになるな”とか、グラデーションのもののついた見方が出来るようになり、広い視点が持てるようになった気がするんです」
―医療の現場でも活かされていますか?
「そうですね。この本には“分人”は人と人との関係性で出来てくる、と書いてあります。私は総合診療医、家庭医で、人と人との関係性や、その患者さんが家族や地域とどういう関係にあるか?という視点を持ちながら考えていくんです。なので、私たち家庭医が、その患者さんの人となりや地域の中でどういう生活をしているのかをみていくことは、その人の“分人”を分かろうとしている、ということなのかな?と思うようになったんです。腑に落ちていきましたね」
―どんな人におすすめしたいですか?
「人間関係に悩んでいる人でしょうか。その人の悪い面ばかりではなく、良い面もあると思えたら、楽になれるかもしれないです。この本は全然難しい言葉で書かれていなくて、すごく読みやすいです。すこし分かりにくい、抽象的に思う部分もあるかもしれませんが、だからこそ、自分の経験に基づいて自分なりに解釈して読みながら、具体的なところに落とし込んでいけます。そういう面白さがある本です」
私も早速ゲットし、一気読みしました。ざっくりとまとめると、この本、みんなで読めば、みんなで幸せになれるだろうなと思いました!私はかねがね、あっちで笑って こっちで泣いて・・・昨日は沈んで今日はハッピー・・・と日々、現場や立場が変わりながら変動する自分に嫌気がさすことがあります・・・ですが、まぁいっか、こんなもんか自分、と気持ちが楽にもなれました。こんな自分を赦していただきたいので、どうか皆さんも読んでください、と願うような本でもあります。いまの自分にとても必要な考え方が沢山…横田先生に感謝しかありません。ちなみに横田先生20代。年下の先生とは思えない、人生のいろはを経験されたような寛容さがにじみ出ていました。
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